メニュー

ビワ摂取でのアレルギー症状に関してのコメント

2024年6月25日富士吉田市でおこった給食でのビワが原因と思われるアレルギー症状に関して

現場での検証をしていませんので現時点での考えられることとして今後どのような対策が考えられるかという視点でご覧ください。

起こった症状は、120名余りが口腔内の違和感、目のかゆみ、数名が腹痛、じんま疹がおこり、幸い重症者がいらっしゃらなかったということでした。早い回復をお祈りします。

ビワが原因と考えられているようです。状況からして普段の給食内容と異なるものとしてビワが原因と考えられたことと思います。

〇ビワでアレルギーが起こるでしょうか?

 起こります。果物や野菜はほとんどが水分ですがその中に少しのタンパクがあります。アレルギーの原因物質となるのはこのタンパクであることがほとんどです。

〇花粉との関連性は?

タンパクは、生物の生命維持など何らかの機能を持っています。これらの同じような機能をもったタンパクは、同じ仲間の動植物の間でよく似た構造をしています(アミノ酸配列、立体構造が似ている)。そうすると、花粉の中に存在するタンパクとビワの中のタンパクが似ているため、ヒトの免疫は、花粉にアレルギーを起こすようになると(感作された状態)、似た構造のビワの中のタンパクにも反応してしまう(交差反応性)ことがわかってきました。

〇花粉症の種類で異なるのでしょうか?

花粉によって異なります。

最も代表的なスギ花粉症では、交差反応をおこす食品は、少ないです。花粉と食物の関係の表 をご覧ください。

カバノキ系の中でもバラ科の植物の間での交差反応が今回のビワアレルギーの原因と考えられます。

〇花粉症は地域差があります

スギ・ヒノキは春の花粉症の代表で、花粉が微細なため本州、九州、四国のどこにいても飛散してきます。

同時期に、カバノキ系のシラカンバ、ハンノキ、ヤシャブシ花粉症がありますが、こちらは花粉が大きいので遠くには飛散しにくいと考えられます。そのためカバノキ系の花粉症は、地域の生息環境に影響されると考えられます。

飯野も、いくつかの病院を転勤しましたが、世田谷(東京都)では、スギ・ヒノキ花粉症が多く、府中市(東京都の多摩地区)では、スギ・ヒノキ、ハンノキ、雑草花粉症が多くなり、さらに、大田原市(栃木県)では、スギ ヒノキの陽性率は東京をはるかに越えて高くなり、カバノキ系を含め様々な花粉症の方がいらっしゃいます。大田原市は自然豊かな地域なのです。

〇花粉症が増えています

この20年、30年で、花粉症が増えていることは、よく報道もされています。実際に花粉症対策商品、医薬品が数多く販売されるようにもなっています。

その花粉症の内容もスギだけではないということです。ヒノキや、地域によっては、ハンノキ、シラカンバ、さまざまな雑草花粉があります。基本的には、あらゆる花の花粉でアレルギーがおこる可能性はあると考えられます。

花粉の多い地域では(大田原市など)では、さらに驚くのは低年齢化していることです。1歳のお子さんが一度花粉時期を経験しただけで、感作されてしまい花粉症を発症しているお子さんが多いのです。

今回の富士吉田市もおそらく自然豊かな木々草花の多い地域ですので、花粉症の多様化、低年齢化が進み、小中学生がかなりの率で花粉症を持っていたことが予想されます。この点は、地域の小児科、耳鼻科の先生方が詳しいと思います。

  シラカンバは、本州では通常標高の高い地域、北海道に自生しています。ハンノキ、ヤシャブシは、平地にも生息しています。ハンノキは、スギとほぼ同時期に開花するため気がつかないこともありますので、この時期に花粉症症状のある方は、血液検査をするとわかることがあります。

〇症状は軽症でしょうか?

多くは軽症です。交差反応をおこすタンパクは何種類かわかっています(アレルゲンスーパーファミリー)、その中で多くの人が発症するのは、比較的壊れやすいタンパクと考えられています。この場合、口腔内、咽頭では痒み、違和感、耳の奥のかゆみが出ることがありますが、胃に入ると消化がはじまりそれ以上の症状は起こりにくくなると考えられています。また、加熱によっても分解されやすいので、加熱した果物、野菜では起きにくくなります。

一部の方で、耐熱性のタンパクで交差反応が起こると全身症状、アナフィラキシーを起こすことがあります。症状の強い方は医療機関で適切な指導をうけてください。豆乳摂取おこすこともありますのでご注意ください

また、これもまれですが、果物、豆乳を摂取してなんともなくても、その後に運動をするとじんま疹、アナフィラキシーをおこす 食物依存性運動誘発アレルギー が起こることもあります。

〇検査はできるでしょうか?

 ビワの特異的IgE抗体を直接測定できる血液検査は、無いようです(私の知る限りです)。

 交差反応を示す、ハンノキ花粉、シラカンバ花粉、リンゴ、モモ、等の果物の特異的IgE抗体を測定することで、感作があることを推測します

 皮膚テストの一つのプリックテストで調べることができます。ビワそのものが必要になります。ビワの果肉果汁のついたプリック針で皮膚に検査をします。 ただし、ビワのある時期でないと困難です。

 食物経口負荷試験でクリニック内で実際疑わしい食品(ビワ)を少量摂取していただき症状の有無を観察します。

〇治療法はあるでしょうか?

対症療法になります。

症状の程度に応じて、摂取制限をします

症状がでてしまったら、経口の抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬の内服をします。口をすすぐ、水を飲むことも有効でしょう。

全身症状がでるような重篤な場合は、緊急時対応ができるようにしておく必要があります。具体的にはエピペン自己注射の携帯です。

スギ花粉症の場合は、鼻炎症状があれば、舌下免疫療法という選択があります。スギに対して反応する体質を変えるので、スギ花粉に関連するトマトでの口腔アレルギー症状は改善する可能性があります。ハンノキによるビワアレルギーには効果はないと考えられます。

〇まどめ

今回、ビワによる花粉果物アレルギー症候群と考えられる多数例の報告がありました。これは、ビワに限って起こった訳ではなく、この時期、地域での新鮮な果物として一時に提供されたために、大人数になってしまったと考えられます。

きっと、品質のよい地元のおいしいビワとして提供されたことと思います。ビワは悪くはありません。

実際には、ビワだけでなく、リンゴ、モモ、サクランボ、豆乳、ナシ、メロン、キウイ、パイナップルなどの花粉果物アレルギー症候群の子どもたちはたくさんいて、多くの方が自覚をしているので、大きな事故は起きていませんでした。

実際には過去に、キウイ、ビワでの集団発生は何度か起きていますが。

飯野も10年ほど前の東京都調布市でのアナフィラキシーショック死亡事故後の対策のお手伝いをして、東京版の食物アレルギー緊急時対応マニュアルを作成してきました。

今後もこうした事故が起こらないような対策が必要と考えています。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME