離乳食開始プログラム
食物アレルギーが心配、湿疹があるので離乳食を進められないお母さん、お父さんへ
赤ちゃんの離乳食が始まり、1歳ごろまでに家族と同様の食事がとれるようになるまでに様々な食品を摂取していくことになります。
この間、食物アレルギーが心配、湿疹がでている、兄弟・家族にアレルギーがあるなどで離乳食の食品を増やすことを躊躇(ちゅうちょ)されている方にご案内します。
すでに、食物アレルギーがあることが診断されている方も、ご相談ください。
アレルギー症状が起きるときは、その前に「感作(かんさ)」と言って、原因となる物質(アレルゲン)に接触してアレルゲンが体の中の免疫細胞と接触する必要があります。近年わかってきたことは、その接触する経路が、呼吸器粘膜、消化管粘膜だけでなく皮膚から体内に入り込むことが多く、さらに皮膚に炎症があるとアレルギー反応が起こりやすい方向に感作が進むことです。
とは言っても誰でもそうなるわけではなく、おそらく遺伝的な微細な違いがあるのでしょう(このことは世界中で研究中です)。
現在わかっていることは、アレルゲンが体内に入ってくる経路として、口から入ってきたアレルゲンに対しては、通常は、アレルギーが起こらない方向に免疫が変わっていくことです。この仕組みを利用したのが、現在保険診療で進められているスギ花粉、ダニアレルゲン舌下免疫療法です。食物アレルギーでも経口免疫療法が有効という臨床研究が数多く発表されています。米国では、ピーナツ等の経口免疫療法が始まっていますが、国内ではまだ標準的な治療ではありません。
それでは、食物アレルギーの発症を予防できるかということですが、これも世界中で臨床研究が進められています。30年前は、乳児期の食品を制限することでその後のアレルギー疾患発症予防ができないか臨床研究がされましたが、結果、食物制限では発症予防はできませんでした。代わりに、早期に適切な量での経口摂取を開始することで発症予防ができるだろうということで現在も臨床研究が進められています。
そして、一定の条件で食品を早期摂取していくことでアレルギー発症を予防できると考えられるようになってきました。この早期摂取に適切な食品として、米国ネスレ社からスプーンフルワンが発売されています。スプーンフルワンは、16種類の食品(23種のアレルゲン)をそれぞれ計量してミックスした食品です。米国では、食物アレルギーの発症予防を目的に販売されていますが、国内では、導入の時点で、すでに食物アレルゲンに感作されていると思わぬアレルギー症状が起こることがあるので注意が必要ということで、日本アレルギー学会、日本小児アレルギー学会、日本小児臨床アレルギー学会、食物アレルギー研究会から注意喚起がされています。
スプーンフルワンに含まれる16種類の食品は、乳児期から成長していくどこかの時点で摂取していく食品です。それらを離乳期から摂取することで、体の免疫システムにアレルギーが起こらないように覚えてもらうことができる可能性があります。
残念ながら、この製品は、日本国内では売り上げが振るわず、2024年はじめに撤退してしまいました。
現時点でできる方法は、
- ミルク、離乳食の摂取状況、アレルギー歴、肌の状態、ご家族の状況などを伺います
- 状況によって、血液検査を実施します。これから摂取していく食品のアレルギーを検査します
- 検査で陰性のものは、少しずつ積極的に進めていきます
- 検査で陽性のものは、検査値によって、少量ずつ摂取出来るかどうかを検討し、必要であれば食物経口負荷試験を実施して摂取可能量を確認しながら増量していきます。
- 基本的には、無意味な制限をしないように、摂取出来るものを見つけて積極的に進めていきます。
離乳食をすすめるにあたりご心配の方はご相談ください